外来での徒然

あなたがヒーローです

2024年1月1日に能登半島で大きな地震がありました。
それから4日後の外来です。

あたまをケガしたからと予約なしの40代の男性患者さんが脳神経外科の外来にきました。

受傷は1月1日の地震の時とのことでした。
受傷から4日経過しており、なんでこんな時期に来たのかなと思いながら診察、話を聞きました。

1月1日は帰省で輪島にいたそうです。そこで被災したとのことでした。

家が崩れ、下敷きに。必死で家から這い出て周りを見ると、奥様も足が家に挟まっていました。何とか引きずり出し、家族で避難したそうです。(家族は全員無事だったと)

家族をガラスの割れた車に乗せ、でこぼこの道路を、避難所を経由しながら、自分が住んでいるこの町まで、なんとか戻ってきたとのことでした。
戻ってきたのは昨日ということでした。

「つぶれた家から這い出たときから血が流れていたから、天井で傷ついたんじゃないかな」とのことで病院を受診したとのことでした。

傷口は4-5日放置されています。大きなかさぶたでがっしり覆われています。ある程度の間は出血していたんだと思います。

かさぶたを洗ってはがし清潔にしながら創部を確認しました。
6㎝と3㎝程度の2か所の挫創、深さは脂肪層まででした。筋層は大丈夫です。


浅側頭動脈など動脈系がやられなくて本当に良かったと思いました。スキンステープラーで縫合して、再度来院してもらうことになりました。

奥様やお母様は他科を受診されていたようです。

スキンステープラーの痛さに半分涙目で必死に耐えているあなたを見ながら、私もなぜか半分涙目でした。

戻ってくる道すがら再度被災する可能性も大いにありえます。避難所に留まる、病院の機能が回復するまで被災地でまつ、など様々な選択があったと思います。

選択の責任を自身の両肩に乗せ、頭に傷を負いながら、危険な道を、安全に、でもできる限り早く、そして家族を鼓舞しながら、窓ガラスの割れた車で帰ってきたんだと思います。

あなたは間違いなくヒーローです、避難お疲れ様でした。