慢性硬膜下血腫という疾病があります。外傷によって頭蓋骨と脳の間に血がたまります。
血がいっぱいたまると血が脳を圧迫します。そして頭痛、嘔吐、麻痺などの症状が出ます。症状がでてしまったら、小さな穴を頭蓋骨に開けて血を吸いだす手術を行います。基本的に手術後症状は消失します。
手術のあとも圧迫されていた脳はすぐに元の形には戻らないことが多いです。
脳と硬膜(骨側)の間にスペースがあいており、脳と硬膜をつなぐ血管が伸ばされている状態です(この血管の破綻が慢性硬膜下血腫の原因のひとつと言われています)。
ですから手術のあとは直接の頭の外傷だけでなく、振動、しりもちなどにすごく気を付けていただきます。といっても大体10%弱の方が再発します。
今回は慢性硬膜下血腫に対して手術をした80代の男性サトウさんのお話です。
手術して2週間程度あとの外来です。
サトウさん「先生、手術のあとから調子ええで、もうすっかり元通りや」
わたし「よかったですね、家帰ってから転んだり頭ぶつけたりしてないですか?」
サトウさん「なん、しとらん。もう大丈夫や。」
わたし「つよく首を振りまわすのもよくないですからね、しりもちとかもだめですよ」
サトウさん「あー・・・・・・・先生、ぶるぶるは大丈夫よな?」
わたし「ぶるぶるってなんですか?」
サトウさん「マッサージのぶるぶるや、気持ちええんや」
わたし「どこにあてるんですか、肩?腰? 今は少し控えたほうがいいかもしれませんね」
サトウさん「いや、あたまにあててるんやけど」
わたし「え??」
サトウさん「あたまにあててるんや。あたまがぶるぶる振動して気持ちええんや」
わたし「頭は絶対にやめてください」
サトウさん「ぜったいか?」
わたし「絶対です」
サトウさん「・・・・・・・・我慢するわ。」
頭にマッサージの機械をあてることが慢性硬膜下血腫再発のリスク因子になるという報告はない気がします・・・・がやめていただきました。再発しないことを願います。