外来での徒然

ちょっと今じゃない

脳神経外科の外来には様々な人が来ます。
その中には認知症の方もいますし、てんかんの方もおられます。

てんかん発作は脳のある部分が突然過剰に働きだすこと、またそれによって様々な症状がでることです。過剰な働きが脳全体に広がると意識を失うこともあります。

このてんかん発作が繰り返し起こるとてんかんと診断されます。
脳腫瘍、脳の血管奇形、脳梗塞など原因となる基礎疾患が脳に存在し、それが原因で発作が繰り返し起こる場合、症候性てんかんといいます。


今回は、80代のジロウさんの外来です。

ジロウさんは、はじめ意識障害、てんかん発作で運ばれてきました。そしてMRIで脳動静脈奇形が見つかり、塞栓術を行いました。
てんかん発作で運ばれる前から、認知機能の低下が進んでおり、時折ぼーっとしていたとのことでした。
周りからは、ぼーっとしていると思ってもてんかん発作を起こしていることもあるので要注意です。
脳動静脈奇形を塞栓し、抗てんかん薬を開始することによって、話しかけてもボーっとしているという症状はほぼ消失しました。ただ認知機能の低下は変わりませんでした。

高次脳機能障害のリハビリを続けるよりは、自宅での生活を希望され自宅退院となりました。その後の外来です。

外来には奥さん、娘さん、本人の3人で来られます。

わたし「家では困ることはありませんか?ぼーっとしてる時間ありませんか?」

奥さん「話しかけても無視するような以前のようなことはないですよ。」

ジロウさん「うん、ないない(笑)」

奥さん「ちょっと。わからないでしょ。それよりフィットネスに行ってほしいんですけど、本人が嫌がるんです」

ジロウさん「うーん、いやがったりしてないけどなぁ」

奥さん「じゃぁ行きましょうね」

ジロウさん「うーーん、ちょっとどうかなぁっておもってるんだわ」

奥さん「ほら、徒然先生なんかいってください!」

わたし「どうしてフィットネスいきたくないんですか?どこか調子わるいんですか?」

ジロウさん「いや、いま人生でさいこうにいいかなって思ってる。絵の調子もすごくいい。フィットネスは嫌じゃないけど、ちょっと今じゃない。」

わたし/奥さん/娘さん「・・・・・・・・」

今じゃなかったらいつやねん!!!って突っ込みが入りそうですが(笑)

ジロウさんは趣味で油絵をかかれます。
入院前、油絵を描きながら突然フリーズしていた、とご家族はおっしゃっておられました。退院後は絵の調子がいいそうです(笑)

趣味は大事ですね、80歳を超えても”人生でさいこうにいい”ってまでいえるなんて。
人生の終盤を謳歌するためにも、今から趣味を作って楽しもう!!!