肺がんや乳がんなどが不幸にも脳転移してしまった方は脳神経外科に紹介されます。
紹介された方はすごく緊張した面持ちで外来を受診してきます。
脳転移に対する脳神経外科医の考え方は様々です。ただ厳然たる事実として脳転移に完治はありません。手術で摘出したり放射線治療を行って画像上消えてしまっても再発しないとは絶対に言えません。
私の考え方(一般的な脳外科医もそうだと思いますが)としては他の病気で亡くなるまで脳転移を制御し脳転移が主原因で亡くならなければ、それは治療できていたと考えます。
そして治療はそれを目標にします。ただ残念ながら脳転移が主な原因で亡くなる方も少なくはありません。
人はいつかはなくなります。自分だけは大丈夫ということはないです。
余命など含めて今後どのような経過をたどるか、患者家族の反応を見ながら適切な量を適切なタイミングで伝えることも医師の重要な仕事です。
できる限り早く受け入れられるように、丁寧に何度も説明していきます。
説明を後回しにすればするほど患者さんの終活期間は短くなってしまいます。
家族や本人が落ち込む姿や動揺する姿を見るのはとても辛いです。
診察室に患者さんを呼び込む際は、深呼吸します。
淡々と事務的に説明することも多いです。
(すべての患者さん家族と一緒に寄り添って、辛くなってると心が持たない気がします)
【淡々と事務的に説明する私】と【目に涙をためて必死に耐えている患者さん、家族】
という構図ができます。
自分は鬼か。。。
そうやってストレスはたまり、私の髪の毛と心はすり減っていくのです。
”成人を心底泣かせる職業”というのは、医師以外に思いつきません。
やってられないわとおもう医師も多いとおもいます。
ただ伝えておきます。
どんなに辛くても、患者さんは必ず前向きになり、終活に向かっていけます!!!そう思わないと、成人を全力で泣かす、なんて損な役回りできません!!
医師の前だからって泣くのをこらえなくてもいいんですよ。泣いてる人もたくさんいます。一緒になって泣いてしまうこともあります。
泣いた方が早く病気を受容し、前向きに終活にむかえられるということも多いです。
【泣いてもいいよ】by 森山直太朗 って思うことあります!
※ 最近はインターネットに情報が溢れています。最初から覚悟ができているご家族が多くなってきている印象です。